SRUSTな本:「The Computer and the Brain」

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数学の国の悠々自適やんちゃ坊主・T先生

タイトル/著者/出版社/ISBNThe Computer and the Brain / John von Neumann (Second Edition with a foreword by Paul M. Churchland and Patricia S. Churchland) / Yale University Press / 0300084730
(国立国会図書館サーチ http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I024555027-00

※日本語版 : 計算機と脳 / J. フォン・ノイマン 著,柴田裕之 訳 / 筑摩書房 / 9784480094131

いきなりDEEP-MATH度:★

オススメポイント:
前回の『数学は言葉』という本の紹介に触発されて、今回は、フォン・ノイマンによる『脳の言語』について触れてみたいと思う。現代計算機を作った本人でもある著者が、コンピュータと脳を比較しつつ、脳の計算機構について論じているのが本書である。(今では日本語訳がちくま学芸文庫から出ているらしい。)実際には講演のための原稿が基になっているようだけれど、病のため未完に終わった、ということが序文に書かれている。
大学院生の時初めて本書を読んで、何より斬新だったのは、その当時の極めて限られた生理学的、神経科学的データから、脳の《効率性》や《サイズ》をいくつかの定義を提案することによりだいたい割り出し、出来たばかり(あるいは本人が作ったばかり)の計算機のそれと比べる、というものだった。つまり、脳では各素子(神経細胞)を信号が通過する速度は計算機の素子に比べて非常に遅いが、その素子たちが構成する体系の《サイズ》は脳の方が圧倒的に大きい。両者を構成する論理構造はそれぞれ異なるはずである。『この主題を進めていくと、必然的に《言語》の問題に入っていくことになる。・・・・・・言語は歴史的偶然の産物であると考えるのが適切だと思われる。ちょうどギリシア語やサンスクリット語が歴史的事実であり、論理的必然では決してないのと同じで、論理や数学も似たように、歴史上現れた偶然の表現形式であるとのみ考えるのが妥当である。』
フォン・ノイマンによると、我々が数学について論じるとき、それは《第二次言語》(secondary language)について論じているのであり、それは中枢神経系の言語である《第一次言語》(primary language)の上に築かれている。『中枢神経系の使用する数学的・論理的言語を調べる際に、我々の数学の表現形式が適切とは限らない。これまで指摘してきた事実は、それが何であれ、我々が数学であると考えているものとかなり異なっていることを証明しているのではないか。』それでもフォン・ノイマンは、中枢神経系の文法を《数学的に》記述できると考えていたのであろうか?